我ら村の緑を守る会!


 
ぼくはキンクスの曲では、この曲がダントツに好きで、代表曲だったり人気投票だったりであまり上位に顔を見せないのが不思議で仕方ない。まあシングル曲じゃないってのもあるだろうし、フォークロック的な曲調もキンクスの代名詞的なサウンドとは違うからってのはあると思うけど。
ちょっとディランの「ライクアローリングストーン」を思い起こすのだけど、歯切れの良いアコギのストローク、瑞々しいピアノのバッキング、溌剌としたドラミング、そのアンサンブルに、こう村の緑を抜けて吹きつけてくるさらっとした風を身に受けているような気持ちよさがあって、イントロを聴いた瞬間に気持ちが浮き立ってしまう。間奏のウーウーウーってコーラスも気持ち良い。そしてなによりこの曲を特別にしている最大のポイントは、レイとデイブがぴったりとデュオるところにある。S&Gを産湯に使ったぼくとしてはどうしてもデュオハーモニーの魅力に抗えない。ぼくはキンクスのアルバムは全部持っているわけではないので、あくまでぼくの知る範囲でだけど、この曲のようにほぼ等量のバランスで二人がヴォーカルを取っている曲って他にないんじゃないか。きっちりハモるためか、レイのヴォーカルの芝居がかった感じもデイヴの荒っぽい感じもおとなしめ。これぞキンクスという曲ではないかもしれない。でもぼくとしてはだからこそ好きだったりする。ぼくの60年代ベスト10のうちの一曲。

ヴィレッジ・グリーン・プリザヴェイション・ソサエティ+13ヴィレッジ・グリーン・プリザヴェイション・ソサエティ+13
ザ・キンクス

USMジャパン 2009-03-04

キンクスはどハマリしたバンドではなくて(『村緑保存会』は好きだったけど、次に買った『マスウェルヒルベリーズ』はぜんぜん好きじゃなかった)、つかず離れずという感じの付き合いではある。キンクスの音楽は、こう音楽にどっぷり耽溺しなくて、表現と自己の間にどこかアイロニカルな距離感がある感じで、それはレイの芝居がかっていたりやや無気力そうだったりするヴォーカルに端的に表れているのだと思うけど、それがぼくとしては必ずしもぴったりくるものではなかったからなのかもしれない。もちろんそういう距離感こそがキンクスのキンクスたるゆえんなのだとは思うけど。
それでも純粋に音楽的に好きな圏内にいるバンドであることは分かっていて、折に触れて思い出して、(たとえばそのカバーアルバムにファインテインズオブウェイン参加してたり、『ダージリン急行』のような映画を観たりしたときに)、CDを買ったりしてしまう。持っているのは『フェイストゥフェイス』から『マスウェル』までかな。それで大体ことたりている気がしている。アルバムで一番好きなのは『アーサー』。佳曲揃いだし、ブラスを入れた華やかなアレンジで、一曲の中にいくつものアイデアを詰め込んでるところなんか、多作で、ある意味集中力のないレイの資質に合ったスタイルなんじゃないかと思っている。しかし、このほぼ完璧なアルバムを「アーサー」なんて間の抜けたオチのような曲でシメるのがキンクスなんだよなあ。
あとコレクション的にはシングル集が必要なんだろう。いろいろ出ているけど、ぼくが昔レンタルしてテープでずっと聴いていたのはこれかな。パイ・コンプリート・シングル・コレクション 1964-1970 。他のベスト盤には「マインドレスチャイルドオブマザーフッド」が入っていない。ぼくはデイヴによるこの曲もキンクス屈指の名曲だと思っているのだけど。